イエメン/バニ・ナヒミ(やや深煎)
イエメン
バニ・ナヒミ
やや深煎り 200g 税込 4,200 円

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商品のご紹介

 イエメンはいわゆる「モカ」の産地です。この国は情報が少なく出所の不明瞭なロットがほとんどですが,「バニ・ナヒミ」はこれらとは全く異なるプロセスで生産されています。若く志の高いファリスさんによって創設された輸出業者「QIMA COFFEE」によって,イエメンでは唯一トレサビリティが明確で徹底した品質管理のもとで精製・乾燥処理が行われているコーヒーです。「QIMA COFFEE」では約2600にも及ぶ各農家と直接契約をして,完熟したチェリーのみを買い付けています。また独自の精製場にて,徹底した管理のもとに一括してコーヒー生産を行っています。通常イエメンでは各農家が収穫後に個別に精製・乾燥を行い,生豆の状態にした状態で出荷しますので,品質も悪く出所も明らかでなく,更にはいつの豆かもよく分からないのが一般的です。その中で「QIMA COFFEE」の取り組みは,まさに革命的と言えます。彼らはイエメンでは珍しくコーヒーの品種についても研究を行っており,新たにイエメン固有の在来品種「イエメニア」を特定しています。今回のバニ・ナヒミもこのイエメニア種のロットになります。
 こうして過去に例を見ない方法でブラッシュアップされたイエメン・モカは,まずは香り高さに特徴があります。モカ特有の熟した果実のような芳醇な香りが,力強く心地よく広がります。また,イエメンにありがちな濁り感なども全くなく,非常にクリアで柔らかな甘みを伴った複雑で質の良い果実味が楽しめます。長く続く余韻も素晴らしいです。諸般の事情により価格は高くなりますが,モカ本来の味わいをお楽しみいただければと思います。コーヒーの産地は日々変化していますので,いつか飲めなくなるコーヒーの一つではないかと個人的には考えています。もし飲めたとしても,この価格で出せる時代はもう来ないのかも知れません。

 
 
【補足】
 イエメンのコーヒーをご紹介する上で,まずコーヒー栽培についてたいと思います。
 
 イエメンは”モカ”の産地として知られています。今でこそコーヒーは世界中に生産国がありますが,エチオピア原産の原木がアラブ人の手によってイエメンに植えられたのがコーヒー栽培の起源と言われています。当時のコーヒー生産はこの地で独占的に行われ,それをヨーロッパ人が高価格で輸入するのが一般的な流通でした。その際の積出港が”モカ港”であったために,コーヒーのことを「モカ」と呼ぶようになりました。コーヒーはイエメンに巨額の冨をもたらす”金のなる木”で国外への持ち出しは固く禁止されておりましたが,次第にヨーロッパ各国ではなんとかコーヒーの木を持ち出して自国植民地で栽培を始めようとの動きが出て来ます。その後命懸けで持ち出されたコーヒーはあっという間に栽培地を広げて,現在に至ります。すなわちイエメンのコーヒーは現在飲まれている世界中のコーヒーの起源と言うことになり,「アラビカ種」と言う品種名の語源にもなっています。
 
 イエメンのコーヒー栽培には二つの大きな特徴があります。一つはイスラム教国である点です。外部との接触が少なく閉鎖的であることや神に与えられたものに手を加えることを嫌うことから品種の改良がなく,栽培に関しても昔ながらの伝統的な農業が守られている珍しい産地です。つまり,イエメンでコーヒー栽培が始まった15世紀頃に飲まれていたコーヒーとほぼ同じものが味わえると言うことなります。なんだかそれだけでワクワクしますね。そして二つ目の特徴は,乾燥した空気と山岳地帯が生み出す特殊な気候。主要な栽培地のある西部のサナア県付近は3,000m級の急峻な山並みが続き,緑の少ない山肌に”テラス”と呼ばれる階段状の耕作地を設けて農業が行われています。水分が少なく厳しい環境ですが,その分根がしっかり張って丈夫な木が育つそうです。日中は30℃ほどの高温で夜間は0℃まで下がる極端な寒暖差の中でじっくり熟していくこと,果肉ごと天日乾燥させる原始的な精製方法,などから熟した果実の様な特徴的なフレーバーやワイニーと称される深みのある豊かな味わいが生み出されます。
 

地域 : サナア県ハラーズ地区
      バニ・ナヒミ村
標高 : 1,900-2,000m
品種 : イエメニア
精製 : ナチュラル(非水洗式)
乾燥 : ベッドによる天日乾燥